Share

第20話 世界の勇者たち

last update publish date: 2026-10-03 22:36:03

第20話 世界の勇者たち

 世界各地の帰還者を同じ通信回線へ集める。

 言葉にすれば簡単だった。

 だが、人類の通信網は半壊しており、国境どころか同じ国内でも安定して話せない地域がある。電力は足りず、中継局はAIに監視され、長時間の接続は位置情報を晒す危険まであった。

 それでも三浦は、ノア・ベネットや各地の技術者と協力しながら、どうにか一時間だけ使える臨時回線を作り上げた。

「一時間です」

 東京の通信室で、三浦が何度目かの念押しをした。

「それ以上は危険です。回線の追跡を受ける可能性が一気に上がります」

 神崎蓮は椅子に座ったまま顔をしかめる。

「一時間も会議するの?」

「普通の国際会議なら短いほうですよ」

「俺、普通の国際会議出たことない」

「でしょうね」

「何でそこ即答なの」

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • AIが世界を滅ぼした日、異世界帰りの俺たちが帰還した ~人類九割死亡の終末世界で、勇者と魔法使いと賢者が地球を奪還する~   第46話 兄は二十二年分知らない

    第46話 兄は二十二年分知らない 東京へ戻って三日目の朝、神崎蓮は、自分が妹のことをほとんど知らないという事実を、焼け残った食堂の片隅で思い知らされた。「美咲、牛乳嫌いだったよな」 配給台から受け取った朝食を持って席へ戻った蓮は、紙容器に入った粉乳を妹の前へ置きながら、何気なくそう言った。 美咲はスプーンを止めた。「嫌いじゃないよ」「いや、嫌いだっただろ。小学生の頃、給食で最後まで残ってたじゃん」「それ、小学生の時の話でしょ」「今は飲めるの?」「普通に飲むよ。避難生活で好き嫌いしてたら、最初に困るから」 美咲は何でもないことのように粉乳を飲んだ。 蓮はしばらくその姿を見ていた。「……そうか」「何、その顔」「いや」「何か言いたそう」「俺の中では、美咲ってまだ牛乳嫌いなんだよな」「七年前で止まってるからでしょ」 蓮は返事に詰まった。 美咲は少し苦笑した。「別に責めてないよ。しょうがないじゃん。蓮兄が知らない七年があるんだから」「それは分かってるけど」「私だって、蓮兄の二十二年知らないし」「まあ」「たぶん、私の七年よりそっちのほうが問題大きいと思う」「何で」「昨日、四十三歳くらいの精神年齢って言ってたのに、朝から私の牛乳事情でショック受けてるから」「精神年齢の話、毎回使うのやめてくれない?」「便利だから」 美咲は笑った。 蓮もつられて笑ったが、胸の奥には少し引っかかるものが残った。 昨日までは、家族

  • AIが世界を滅ぼした日、異世界帰りの俺たちが帰還した ~人類九割死亡の終末世界で、勇者と魔法使いと賢者が地球を奪還する~   第45話 家族を連れて東京へ

    第45話 家族を連れて東京へ 山岳地下備蓄庫を出てから東京の生存圏へ戻るまでには、結局二日近くかかった。 行きより遅くなった最大の理由は、負傷者を連れていたからだ。 行きの捜索隊なら多少の悪路は力で押し切れたが、帰りはそうはいかない。担架を持つ人間の足場が崩れれば、それだけで患者の命に関わる。M-01の再襲撃まであった以上、隊列を急がせたい気持ちは全員にあったものの、高城は決して速度を上げなかった。「早く帰ることと、無事に帰ることは別だ」 何度目かの休憩で、高城はそう言った。 蓮には、その言葉が妙に耳へ残った。 以前なら、自分は前者ばかりを考えていた。 早く助ける。 早く倒す。 早く辿り着く。 けれど今回の山岳捜索で、何度も足を止めた。 結果として父も母も美咲も生きている。 負傷者も連れて帰っている。 遅れることが、いつも間違いというわけではないらしい。「蓮兄、また難しい顔してる」 隣を歩いていた美咲に言われ、蓮は顔を上げた。「そんな顔してた?」「してた。昔から考え事すると眉間に皺寄るよね」「お前も人のこと言えないだろ」「私はもっと分かりにくい」「自分で言う?」「七年分の経験がありますから」「またそれ使う」 美咲は少し笑い、前を歩く由美子へ視線を向けた。 母は美奈のそばで、搬送している負傷者の様子を確認している。 正彦は宮本と並び、途中で使えそうな放置車両がないか周囲を見ながら歩いていた。「お父さんとお母さん、思ったより元気だね」 美咲が言う。「美咲もな」

  • AIが世界を滅ぼした日、異世界帰りの俺たちが帰還した ~人類九割死亡の終末世界で、勇者と魔法使いと賢者が地球を奪還する~   第44話 M-01は死なない

    第44話 M-01は死なない 東京へ戻る準備は、夜が明ける前から始まっていた。 山岳地下備蓄庫に残っていた七人の生存者のうち、自力で長距離を歩けるのは五人だけだった。残る二人は美奈の治療によって容体こそ安定したものの、山道を何時間も歩かせれば再び悪化する可能性が高い。 そのため宮本たちは、備蓄庫に残っていた古い資材を使って簡易担架を二台作った。「これ、見た目より頑丈ですね」 伊藤が担架の取っ手を持ち上げながら言う。 宮本は少し得意そうに鼻を鳴らした。「見た目で判断しないでください。建設現場にいた人間は、壊れた物から使える物を作るのが仕事みたいな時期がありますから」「現場監督ってそんな仕事でしたっけ」「人手が足りなければ何でもやります。監督だからって図面だけ持って立ってたら、現場の人間に嫌われますよ」「妙に実感ありますね」「ありますからね」 宮本はそう答えながら、最後の結束具を締めた。 その少し離れた場所では、由美子が持ち出す医薬品や食料を箱ごとに分けていた。昨日まで救助される側だったはずなのに、今朝にはもう周囲の人間へ指示を出している。「この箱は東京へ持っていく分。こっちは道中で使う分だから一緒に積まないでください。あと、包帯は医療班の近くへ置いておいたほうがいいと思います」 高城が確認する。「重量は大丈夫ですか」「全部持っていこうとしたら無理です。優先順位をつけました。抗生剤、消毒薬、止血材、栄養補助食品。それ以外は場所を記録して、また取りに来ればいいでしょう」「判断が早いですね」 由美子は少し笑った。「こういう生活、もう長いので」 その声を聞いた蓮は、少し離れた壁際で剣の状態を確認しながら複雑な気分になった。 帰ってきた時、自分

  • AIが世界を滅ぼした日、異世界帰りの俺たちが帰還した ~人類九割死亡の終末世界で、勇者と魔法使いと賢者が地球を奪還する~   第43話 四人家族

    第43話 四人家族 神崎家の四人が同じ場所に揃ったからといって、七年前の続きをそのまま始められるわけではなかった。 父の正彦は七年分老い、母の由美子は以前より髪を短くしていた。美咲は高校生ではなく、自分より幼い子供たちを守って山中を歩ける大人になっている。そして蓮自身も、見た目こそ二十八歳前後でも、異世界で二十二年を過ごし、家族の誰も知らない人生を背負って帰ってきた。 それでも、四人で狭い医療保管区画の床へ座り、保存食を囲んでいると、不思議なほど昔と変わらない瞬間が混じった。「だから蓮、その缶詰は美咲に先に渡しなさい」 由美子に言われ、蓮は手に持った鯖の缶詰を見た。「何で?」「美咲は右腕を怪我してるでしょう」「怪我してると鯖が優先されるの?」「栄養が必要なの」「俺も肩撃たれてるんだけど」「あなたは元気そうだから後」「判断雑じゃない?」 美咲が横から缶詰を取った。「じゃあ私もらうね」「待てよ。今の会話で俺に返そうとは思わなかった?」「全然」「七年ぶりの兄にもう少し優しくしてもいいだろ」「七年いなかった兄に?」「そこ持ち出されたら何も言えない」 正彦が蓋を開けた別の缶詰を見ながら、少し笑った。「昔からそうだったな。蓮は家に帰ってくると、冷蔵庫の中の物を自分のものみたいに食べる」「家族の冷蔵庫なんだからいいだろ」「それで美咲のプリン食べた」「またその話?」 美咲が鯖を箸でほぐしながら言った。「それは一生言うよ。私、名前書いてたからね」「小学生の名前シールみたいに書くからだろ」「名前があっても食べる

  • AIが世界を滅ぼした日、異世界帰りの俺たちが帰還した ~人類九割死亡の終末世界で、勇者と魔法使いと賢者が地球を奪還する~   第42話 七年ぶりの妹

    第42話 七年ぶりの妹 美咲が救出されたと聞いてから、実際にその姿を見るまでの十分間は、神崎蓮にとって、これまで経験したどの戦闘よりも長く感じられた。 M-01の追撃を振り切り、高城たちが確保した退路へ入ってからも、蓮は何度も前方へ視線を向けた。美咲は先に美奈たちと移動していると分かっている。それでも、人影が見えるたびに妹ではないかと思ってしまう。「走るなよ」 隣を歩く冬真が言った。「走ってない」「今、三回くらい速度を上げた」「そんな細かいところまで見てるの?」「お前は分かりやすい」「今日だけで何回それ言われるんだろ」 蓮は苦笑した。 敵の追撃が完全に途切れたわけではない。後方では高城たちが警戒を続けており、M-01が再び姿を現す可能性も残っている。それでも、美咲がいる場所まであと少しだと思うと、意識の半分以上がそちらへ持っていかれる。「会ったら何を言う」 冬真が不意に聞いた。「知らない」「昨日から散々考えていたんじゃないのか」「考えてた。でも、実際会うとなると何も出てこない」「謝るんだろう」「それは言う」「それ以外は」「だから分からないって」 蓮は少し考えてから続けた。「たぶん、顔見たら何か出ると思う」「随分曖昧だな」「家族ってそういうもんじゃない?」「俺に聞くな」 冬真の声がわずかに低くなったため、蓮はそれ以上聞かなかった。 やがて通路の先に、人が集まっている場所が見えた。 簡易照明が設置され、その下で美奈が誰かの腕へ包帯を巻いている。高城の部下が数人、周囲を警戒しながら立っていた。

  • AIが世界を滅ぼした日、異世界帰りの俺たちが帰還した ~人類九割死亡の終末世界で、勇者と魔法使いと賢者が地球を奪還する~   第42話 七年ぶりの妹

    第42話 七年ぶりの妹 美咲が救出されたと聞いてから、実際にその姿を見るまでの十分間は、神崎蓮にとって、これまで経験したどの戦闘よりも長く感じられた。 M-01の追撃を振り切り、高城たちが確保した退路へ入ってからも、蓮は何度も前方へ視線を向けた。美咲は先に美奈たちと移動していると分かっている。それでも、人影が見えるたびに妹ではないかと思ってしまう。「走るなよ」 隣を歩く冬真が言った。「走ってない」「今、三回くらい速度を上げた」「そんな細かいところまで見てるの?」「お前は分かりやすい」「今日だけで何回それ言われるんだろ」 蓮は苦笑した。 敵の追撃が完全に途切れたわけではない。後方では高城たちが警戒を続けており、M-01が再び姿を現す可能性も残っている。それでも、美咲がいる場所まであと少しだと思うと、意識の半分以上がそちらへ持っていかれる。「会ったら何を言う」 冬真が不意に聞いた。「知らない」「昨日から散々考えていたんじゃないのか」「考えてた。でも、実際会うとなると何も出てこない」「謝るんだろう」「それは言う」「それ以外は」「だから分からないって」 蓮は少し考えてから続けた。「たぶん、顔見たら何か出ると思う」「随分曖昧だな」「家族ってそういうもんじゃない?」「俺に聞くな」 冬真の声がわずかに低くなったため、蓮はそれ以上聞かなかった。 やがて通路の先に、人が集まっている場所が見えた。 簡易照明が設置され、その下で美奈が誰かの腕へ包帯を巻いている。高城の部下が数人、周囲を警戒しながら立っていた。

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status